「じゃあ、わたしも雪音も特殊な能力を持っているかもしれないってこと?」

「たぶんね。君たちはまだ能力に目覚めていないからわからないけど」

そこまで聞いてわたしはハッと気づいた。

「…せ、先生は!?陣野先生は?一千年前にイヴは自分の恋人だったような話をしていたけど…」

穂高は唇の端を少し上げて微かに微笑むと、真面目な顔に戻って言う。

「陣野は最も古い時代から存在している『吸血鬼』だ。イヴに執着し彼女を『ヴァンパイア』たちから奪った。そして特殊な能力で彼女から永遠の命をもらい、彼女に子を産ませた。その子の不吉な能力に『ヴァンパイア』の破滅を感じたイヴは、子の能力を10人のヴァンパイアや吸血鬼に分散させ、子の体を葬った。子の能力は強力で能力を分散させなければ殺すことはできなかった。そしてイヴは子とともに自殺したと言われている」

「陣野先生が……そんな鬼のような吸血鬼だなんて…」

冷たい氷のような瞳の先生と、温かかった先生の胸を思い返す。

どちらが本当の先生なのか、考えるほど頭がぐちゃぐちゃになる。

「イヴが放散させた子の能力は『イヴの欠片』と呼ばれている。そして今、その欠片が10人のヴァンパイア…今回は人間の江島先生だったが、どこかのヴァンパイアたちに薔薇の形のアザとして現れ始めた。恐らく陣野はその欠片を集めてイヴを甦らせようとしている。そのイヴの生命を受け継ぐ能力をもった吸血鬼が、君なんだ」