雪音の顔が、太陽に白く反射する雪の輝きのように、ふんわりと微笑んだ。

優しく、嬉しそうに。

「雪音…!!」

あの通り魔事件のあった6年前から全く笑ったことのない雪音が。

穂高の顔をじっと見つめながら、間違いなく微笑んでいる。

信じられなくて。

あまりに唐突な雪音の素敵な笑顔に、わたしは涙が溢れそうだった。

「お姉ちゃんのかれしさん」

雪音はもう一度たどたどしく『かれし』を口にすると、嬉しそうに穂高を見つめた。

雪音の時間は6年前に止まってしまったのに、あの日から他の子より成長もゆっくりで、笑うこともなかった妹が、今、穂高を見て笑っている。

その相手が自分じゃなかったのは、ちょっぴり悔しかったけど。

でも、そんなことどうでもいいくらい、嬉しかった。

思わず雪音に駆け寄り、力いっぱい抱きしめる。

「雪音……!!」

不思議そうにわたしを見つめる雪音に顔を近づけて言う。

「雪音。もう一度、お姉ちゃんに笑顔を見せて」

瞬きをして、唇の端をかわいらしくクイッと上げて微笑む雪音の笑顔。

「お姉ちゃん…かれし…おめでと」

「……ゆきね……」

わたしはそのまま雪音を抱きしめ、声を上げて泣いた。

その横で穂高はずっと嬉しそうにわたしたちを見つめていた。