ゆらゆらと頭が揺れる感覚の中で。

アザの熱さがすうっと引いてくるのを感じた。

……まるで穂高が熱を全部吸い取ってくれてるみたい。

不思議と痛みはもう感じなかった。

ただ気持ちの良い揺らぎの中で、わたしは瞳を閉じていた。

……ジュル!!

穂高は音をたてて牙を抜くと、唇から滴ったわたしの血を指でふき取りそのまま舌で舐めとった。

穂高の瞳が再び悔しげに揺れる。

わたしの腕をそっと下へ降ろし手を離した。

「…穂高?」

「……やっぱり遅かった。『イヴの欠片』はもう消すことができない」

ハっとして自分の胸を見下ろす。

そこには、薔薇の花の形のアザがくっきりとさっきと同じ姿で残っていた。

「『イヴの欠片』……?」

「まさか江島先生がイヴの欠片を持っていたなんて、人間だから油断した…。イヴは人間にまで欠片を放散させることができたのか……」

思いつめたように瞳を細めて呟く穂高。