学校を出て無我夢中で走っていて気がつくと、体育倉庫の横に来ていた。

「…う…っく…」

自分が泣きだしていたことにも気付かずにここまで走ってきたことに驚いた。

倉庫の壁におでこをつけて思わず「…ふ」と泣き声を漏らす。

「…ふ…ふぇえ」

体育館の方からバスケ部が練習するボールの床を跳ねる音が聴こえるその場所で、わたしは泣くのを堪えながら肩を震わせる。

なんでこんなに泣きたくなるんだろう?

自分の感情というより、心の奥底の『なにか』が揺さぶられる不思議な感覚。



――――水中花が、深海から囁くように。



『カヅキ……わたしはほんとうは、あなたを愛していたの……』




………『イヴ』……あなたなの………?






「……神音……!!!」