「さ、先生、横になってください」

江島先生が優しく陣野先生をベッドに寝かせた瞬間。

陣野先生の顔が一瞬強張ったように動かなくなった。

「先生?どうかなされました?」

江島先生が訝しげに身をかがめたその時、陣野先生は江島先生の白衣の胸元あたりを少し凝視し、冷静な声で言った。

「……その胸元のアザは?」

江島先生が「えっ?」と呟き、少し赤くなって自分の白衣から垣間見える胸を隠すように手を当てる。

「…これは、最近急にできたアザなんです。原因がわからなくて、気になってるんですが、小さいですし、なんだか花のように綺麗なアザなので少し様子を見てるんですけど。保険医なのに自分の体には不養生なんてだめですね」

照れたように江島先生は頬を赤らめて笑った。

「そうですか。いや、女性の体はデリケートなものです。失礼なことを言いました」

「いいえ…。それよりも先生、体調を戻さなきゃだめですよ」

窓から差してくる朝の明るい陽の光を浴びる二人の姿は、とても美しくてお似合いだった。

わたしと先生じゃ子供と大人だけど、江島先生みたいに綺麗で大人な女性といると、陣野先生の美しさがさらに際立つように見えて、わたしは不思議と哀しくなった。

「…陣野先生、わたし、教室に戻りますね」

言うや否や廊下を振り返り、わたしは保健室を出て走りだす。

その時、陣野先生の声がわたしの背中を追いかけてきた。

「入江、ありがとう…!」