入学した時からずっと好きだった先生への気持があふれ出てきて、胸の鼓動がドキドキと止まらなくなった。

「…先生、わたし…ずっと、先生のことが……」

言いかけたわたしの上に、先生の艶っぽい黒髪が落ちてきた。

「せ、先生!?」

今にも意識を失いそうなほどに、先生は表情を歪ませわたしの上に倒れかかってきた。

先生の綺麗な顔に冷や汗が流れる。

「神音…保健室まで…肩を貸してくれない…か?少し休めば、大丈夫だから…」

「せんせ…」

思い切り力を入れて先生の体を立たせると、先生は少し苦しげにため息をついた。

160センチのわたしがゆっくりと180センチ以上ある先生の体を歩かせる。

まだ早い朝の校庭には誰もいなくて、どこまで行っても先生と二人きりだという錯覚に陥ってしまうほどに、わたしは先生の息遣いだけ感じていた。

イヴなんて知らない。

でもわたしの中の『なにか』が、わたしの心に植わる花を揺らしていた。

……水中花のように。

それははるか昔から、誰にも見えない海の底深く沈む花。

秘密めいていて、誰も知らない声を発するその花に、わたしの心はどうしようもなく揺さぶられていた。