校庭の横をすり抜けて体育館横の体育倉庫の前までやってきた。

ここに来るまでに誰にも会わなかったことにほっとしながら、まだ鍵の空いていない体育倉庫の窓を外からそっと覗く。

昨日の恐ろしい光景を思い出し、心臓がきゅっと縮むほどの不安を感じながら。

「……なにも、ない…?」

倉庫の中は、雑然と体育用具一式が置かれている以外は、いつもと何も変わりがなかった。

ヴァンパイアの姿はおろか、血の一滴さえも見当たらない。

「どういうこと?あのヴァンパイアは生きていたってこと…?」

窓から顔を離し、体育倉庫の壁に向かってひとり言を言う。

「…死んださ。灰になった奴を私が始末した」

「!?」

少しハスキーで色っぽい声に、ハッとして振り向く。

……まさか!?

わたしからは死角になった体育倉庫の角に、男性の長い足が見え、わたしは急いで体育倉庫の角を曲がり男性を覗きこんだ。

「…陣野先生!!」

倉庫の壁に寄りかかるようにして座り込み、長い足を投げ出すようにしている先生がそこにいた。

束ねている長髪を乱れるように鎖骨に落とし、少し汗を流しながら苦しげに肩で息をする先生をわたしは信じられない思いで見下ろした。