わたしはその30分の間に、自室で着物から自分の洋服に着替えた。

オフホワイトのカットソーに、黒のひざ丈スカートだ。

スカートだけど、着物よりは全然動きやすく、脱出には有利だ。

脱出を許してくれた静流さんが、わたしの部屋にそっと戻してくれていた。

「やっぱり洋服は楽でいいな。着物は息苦しくて…」

言いながら、ふとんで眠っている雪音の頭を撫でた。

サッと立ち上がり、部屋の外に向かって歩き出した瞬間、雪音が小さく声を発した。

「お姉ちゃん、気をつけ…て」

笑顔で見上げる雪音に、笑顔で応えた。

「うん」

わたしには、一千年前のことなんてわからない。

でも、大切なのは、今この時なんだ。

静流さん、今、あなたが愛している人から目を逸らさないで。

愛する人がいる今なら、わたしにもわかる。

――――シオは、あなたを深く、愛している。

必ず………彼の目を覚まさせてあげる――――――――――!!