夜がやってくる前に、わたしは静流さんとしたのと同じように雪音に手紙を書いた。

雪音はそれをじっと表情を変えずに見つめる。

「いい?雪音」

雪音に顔を近づけ、表情をうかがった。

雪音は微かに笑うと、わたしにしがみついてきた。

「いい…よ、お姉ちゃん…雪音…待ってる」

「…雪音…!」

手紙の内容は12歳の雪音には少し酷な内容だとわかっていた。

でも、雪音は誰よりも優しい子だ。

自分よりも、周りの人たちの幸せを願う子だ。

手紙にはこう書いた。

『雪音。お姉ちゃんは今夜ここを出ます。レイと綺羅、そして穂高を助けなければいけません。寂しいかもしれないけど、少しだけ、待っていてください。必ず戻るから心配しないで。雪音のこと大好きだから、必ず戻ります。神音』

今、危険なことに小さな雪音を巻き込むわけにはいかないから。

雪音はぎゅっとわたしの着物の袖を掴んで、

「雪音も…大好き」

そう言って顔いっぱいに笑顔をつくった。