目の前には、四つ角に赤い柱を壁に走らせている古めかしい、けれど神々しささえ漂うような小さな神社があった。

シオは石の階段を昇り、その両開きの扉をギシギシと音を立てながら開け放ち、中へと入っていく。

それにゆっくりと続いて行くわたしたち3人。

中はこじんまりとした造りで、古い木の湿ったような匂いが建物の年季を感じさせた。

「レイス様、扉を閉めていただけますか?」

シオが神社の奥で振り返った。

「はいよ」

少し眉根を寄せて扉を閉めるレイ。

窓一つ、光の入りこむ隙間すらほとんどない外界から遮断されたこの場所。

扉が完全に閉まってしまうと、ここは本当に真っ暗になった。

…だけど、暗闇に光るシオの深紅の瞳と、レイの青の瞳が、ここが真の暗闇じゃないことを告げていた。

ヴァンパイアも吸血鬼も、本来は夜に生きる生き物なのだ。

わたしたちには、暗闇など、恐るるに足りない。

暗闇の中、わたしは吸血鬼の瞳で静かに中を観察していた。

…ここはご神体を祀っている本殿だろう。

狭く小さなこの空間に、ただ一つ、生命反応を全く感じさせない物体があった。

もとは黄金だったに違いないと思われる鈍い土気色をまだらに散りばめたかのような仏像が、本殿の真ん中に一体だけ立っていた。

それはわたしの体半分くらいの大きさだったけど、慈悲と憤怒、どちらともとれるような不思議な顔立ちで佇んでいた。