「え、えぇええ!神音、子供産んでるんだ!?それに一千年も生きてるの!?」

突然鳥居にこだまする綺羅の突拍子もない声。

レイが冷たい顔で「静かにしろ、綺羅」と言うと、綺羅は両手で口を押さえて黙り込んだ。

「先ほどから気になっていたのですが、そちらの金髪の女性は?」

シオが冷静な口調でレイに問いかけながら、まだ口を押さえたままの綺羅を見つめる。

「もと人間の吸血鬼だ。害はないがちょっとばかりバカでね」

綺羅がふてくされた顔でレイを睨みつけたけど、レイは知らん顔だ。

シオは長い前髪の奥で眉根を寄せ、低い声音を発した。

「その女性はここから先には立ち入ることはできません。神音様と雪音様、それとレイス様はこちらへどうぞ」

シオが神社の方へと手を差し向ける。

「な、なんでよぉ。なんでわたしはだめなの!?」

さらにふくれっ面になる綺羅がわたしの腕をむんずと掴んだ。

「ここは吸血鬼の神聖な場なのです。あなたのように人間くさい吸血鬼にはご遠慮願いたい」

シオはそう言うと、さっさと神社に向かって歩き出した。

まだわたしの腕を掴んだままの綺羅の腕をレイが掴み上げる。

「綺羅、言うことを聞け。オレはわがままな女は嫌いだね」

「…レイ」

泣くのを必死で堪えている綺羅をしり目に、レイはわたしと雪音の手を取りシオのあとについていく。

振り返った綺羅は真っ赤な顔で涙を流していた。

……綺羅、ごめんね。