わたしと雪音、そしてレイと綺羅が車から降りてシオのあとを歩いて行く。

いくつもの鳥居を抜けた先に、森の中で息を潜めているかのような小さな神社が見えてきた。

……なんだろう、この感覚は?

不思議なほどに、懐かしい感覚。

自然と、頬を伝う涙に、隣を歩く雪音だけが気づき不思議そうに首をかしげる。

「へぇ~。なるほどね。ここが吸血鬼のアジトってわけ?街の人ごみに紛れて姿を隠しているヴァンパイアの『ガイア』とはまた対照的だねぇ」

レイが感心したように笑みを浮かべながら呟いた。

「ここは吸血鬼の一族でもごく一部の者しか知らない秘密の隠れ家です。我々の一族は一千年前から形を変え、場所を変えながらもこの神社を護ってきました。ここに祀られておられる方をお護りするために……」

シオが神妙な顔でわたしたちを振り返った。

「イヴ様。ここに祀られておられるのは、あなたと陣野火月様のお子なのです」

「!?」

……わたしと、陣野先生の……子供!?

「…どういう、ことだ?」

レイが硬い表情でシオを睨むように凝視した。

「一千年前、イヴと名乗るヴァンパイアはお二人いたのです。ヴァンパイアの祖である彼女たちは、双子でした。そのうちの一人はヴァンパイアの祖として崇められ、もうお一人は影としてその姿を隠し続けていたのです」

シオの言葉に、先を待ちきれないようにレイが言葉をたたみかけた。

「まさか、その影のイヴってのが…」

シオはレイの言葉にニッコリと微笑むと、わたしに向かって手を差し出した。

「イヴ様の影の存在として彼女を護り、イヴ様とご結婚された陣野火月様のお世話をなさっていたのが、神音様、あなたであり、そして火月様のお子をお産みになったのもあなたなのです」