綺羅はその声で、唇を噛んで黙ってしまった。

また泣きそうに瞳を潤ませながら。

弱い女は好きじゃないと言われて、綺羅が必死に堪えているのがわかる。

…わたしは、レイが時々、わからなくなる。

優しいのか、冷たいのか、真面目なのか、軽いのか。

でも、綺羅に冷たくしたのは、きっとレイの優しさ。

ヒトは結局、自分の意志で立つことができなければ、拠り所を失った時、最後はぽきっと壊れてしまう。

綺羅が、頼っていた両親を亡くして、折れてしまったように。

「ねぇ、綺羅さん。今は、死にたいわけじゃないんでしょう?」

わたしの突然の問いかけに、綺羅はふっと驚いた顔でわたしを見た。

「…うん。レイがいるから…」

わたしは二コリと微笑みを投げかけ、綺羅の手をとった。

綺羅はますます驚いた顔で目をぱちくりさせる。

「だったら、レイのキス、奪い取るくらいに強くならなきゃ。…好きなんでしょう?」

綺羅は、激しい瞬きのあと、子猫みたいに愛らしく瞳を輝かせて……わたしに抱きついた。

「ありがとう!神音さん。あなたいい人!わたしのお友達になって!」

子猫みたいな彼女を抱きしめながら、わたしは気づいてしまった。

レイが嬉しそうに一瞬、瞳を細めたのを。

―――レイはやっぱり、彼女を見捨てているわけではない。