「わたし…両親が死んでどうしていいかわからなくて、泣いてばかりだった。ある日、ふと気づいたらナイフを手にとっていたの。ああ…このまま死んじゃおうって思った。最期に大好きな星の下で死のうと思って真夜中に公園に行ったの。手首を切って…意識を失う直前、星みたいにキラキラした銀髪の人が現れた」

……それが、レイ。

レイは切れ長の瞳を細めて、微かに笑う。

「夢みたいに綺麗な人だと思った。夢の中でその人は、『君の血、いらないなら、オレが吸うよ』って牙を突き立てた。気づいたら、わたしは吸血鬼になっていて彼の血を吸っていた」

「あの日はちょいと飢えてたからね」

冗談とも本気ともとれないような曖昧な表情で、レイは呟いた。

でも、わたしにはなんとなく、わかった。

レイはただ飢えていたから綺羅の血を吸ったんじゃない。

彼女が一度捨てた命を、彼は“拾いあげよう”としたんだ。

…恐らく、レイなりの“良心”で。

「でも、レイはそれからはとても冷たかった。ガイアに住みついたわたしのこと散々無視するし」

乞うような瞳でレイをちらりと見上げた綺羅に、レイは明らかにそれとわかる冷たい声音で言い放った。

「当たり前だろ?オレは猫を拾ったわけじゃないの。ミルクをあげるのは一度きり。いつまでも泣いてすがられたって、オレはそんなお人よしじゃないよ」