着替えなんて持ってきてないわたしは、来た時のラフなオフホワイトのカットソーとスカートに着替えて浴室を出た。

さっきの騒動で雪音が起きてやしないか心配だったけど、そんな心配もどこ吹く風な様子で雪音はこんこんと眠っていた。

……疲れてるのね、当然か。

雪音の様子を見届けてわたしは静かに部屋を出た。

隣のレイの部屋のドアを叩く。

「…レイ、いる?」

声をかけると、少ししてレイがドアを開け、困り果てた顔で「待ってたよ、神音ちゃん」と中へ促す。

「…ふっ…うぇえええん!!」

…………え?

金髪の美少女が人目もはばからず、床に突っ伏して泣くその姿に、なんと声をかけていいのかわからない。

レイは銀髪の頭を掻きながらわたしを綺羅の前まで引っ張っていき、そこに正座させた。

「レイ!?」

「悪い、神音ちゃん。オレ、女の子の涙に弱いの。綺羅、なんとかして」

「……え?……ええ!?ちょっと、レイ!!」

……こ、こいつ。

自分が泣かせた女をわたしにどうにかしろ、なんて男の風上にも置けない…。

「レイ。この子に何したのよ?まさかまたキスしたんじゃないでしょうね?」

できるだけドスをきかせた声で睨みつける。

その間も大声で泣き続ける綺羅。

「違うって。オレ、綺羅にだけはキスしたことないもん」

それを聞いたとたん、綺羅の泣き声がピタリ、と止んだ。