眠たげな雪音をベッドに寝かしつけると、わたしはシャワーを浴びに浴室へと入った。

レイがいい人だっていうのはわかってる。

今まで味方だったガイアがイヴを“危険因子”とみなし、それに味方する者までも抹殺すると宣言したこの状況で、変わらずにわたしに味方してくれるレイ。

それは彼が穂高の親友だからに他ならないけれど、確かに今のわたしにとってレイの存在は大きい。

今、レイがいなければ、穂高もいないわたしはきっと、途方にくれていたはずだからだ。

ありがとって、喉まで出かかっているんだけど……。

「でも、キスは別よね」

言い切って、裸の体にシャワーをあてる。

鏡に映る2つの欠片。

胸の真ん中と、右肩に一つずつ薔薇のように浮き上がったそのアザ。

江島塔子先生と、国枝沙耶の命が宿ったその場所に、わたしは手を当てて瞳を瞑った。

二人の命に祈りを捧げながら、涙がシャワーのお湯とともに頬を伝った。

「………っ」

――――どうして、吸血鬼は恋をすると命を懸けるんだろう。

あまりにあっけなく恋のために命を散らした二人に、わたしはどうしようもなく切なくなった。

だけどわたしは知っている。

わたしも彼女たちと同じだということを。

………穂高がいなければ、わたしは、生きる意味を見失ってしまう。