少し眠たげにあくびをし、わたしを見上げる。

「お姉ちゃん…その銀髪のお兄ちゃん…誰、なの?」

警戒するようにわたしを挟んで向こう側のレイをちらりと見上げた。

「この人は…」

言いかけたわたしの声を遮ってレイが言う。

「レイスだよ。穂高のお友達。レイって呼んで、雪音ちゃん。銀髪は初めてかな?怖くない怖くない。大丈夫。オレ、女の子には優しいから」

最後にウィンクまでして爽やかな笑顔を投げかけたレイに、雪音はあからさまに嫌そうな顔をした。

「…お姉ちゃん…この人、お姉ちゃんに…キスしたいって、思ってる」

雪音の鮮烈な一言に、わたしもレイも立ち止って思わず目を合わせた。

焦ったように瞳を泳がせるレイ。

「神音ちゃん!まさかこんな状況で…キ」

キスと言いかけたレイの頬に炸裂した平手打ち。

「いこ、雪音!」

502号室のドアに鍵を差し、素早い動作で雪音を中へ押し込み閉めかけたドアの内側からレイを振り返った。

右頬を押さえて哀しげに見つめるレイに言葉を投げつける。

「今夜は、絶対!近づかないで!」

バタンと激しい音をたてて閉まったドアの向こう側で、レイが言った。

「やってもいないのに、ひどいよ…神音ちゃん」