「穂高……わたし、いったい誰………?わたしのこと、なんでも知っているんでしょう?」

穂高の胸の中、震える声で、彼を見上げた。

穂高は、わたしのシャツの破れた胸元をチラリとみると、

「とりあえず、これ着て」

と、自分の着ていたパーカーを脱いでわたしに差し出した。

「…あ…!」

自分の恥ずかしい姿を想いだして、思わず赤くなったまま慌ててパーカーをはおった。

穂高は目を伏せがちのまま、ポケットからハンカチを取り出すと、わたしの血で汚れた顔を拭きだした。

「ほ…穂高…!」

「じっとしてて」

体育館に、穂高と二人。

雨の音だけがやけに耳に響いて、頬を撫でる穂高の指が、やけにくすぐったかった。

沈黙を破るように、穂高が小さく囁いた。

「…ヴァンパイアは、凶暴な奴らばかりじゃない。神音には、わかってほしい」

表情を変えずに、真剣にわたしの頬を拭きながら言う穂高に、なんだか胸が痛くなった。

「…知ってるよ。穂高も、ヴァンパイアだもん…」