炎が上へ上へと突きあげるように轟音をたてる。

こんなにも炎が恐ろしいと感じたことはなかった。

でも今は、雪音が死んでしまうことのほうが何よりも恐ろしかった。

バタンと開け放った4階の部屋。

駆け込んだわたしたちの視線の先に、夜の闇に浮かぶバルコニーが見えた。

「雪音!!」

煙が充満する部屋を駆け抜け、開け放たれている窓の外のバルコニーへと駆け寄ろうとしたその時。

窓の外から吹きつけた風と同時に、ミシミシと音をたてて大きな書棚が倒れてくるのを瞳の端で捉え、身を凍らす。

……ぶつかる…!

「…神音ちゃん…!」

この身が、毬のように突き飛ばされ、ごろごろと床を転がる。

あちこちで火花の散る音がする中、よろけながら起き上った。

「……ん…」

わたしがいたはずの場所に、レイがその身を盾にして倒れている衝撃。

彼はその下半身を書棚の下敷きにして、うつ伏せに倒れていた。

「レイ!!!」

レイの手を取る。

レイは微かに瞳を開けると、なんでもないというように笑った。

「しくっちゃった。でも、女の子を護るのが王子様の役目だからね。大丈夫だよ、神音ちゃん。足以外はピンピンしてる。速く雪音ちゃんのところに行って。オレは自力でなんとかできる」

「……でも!!」

眉を吊り上げてレイの手を強く両手で握る。

「いいから、速く!!!」

レイの厳しい言葉に、わたしは意を決すると彼の手を最後に強く握って立ち上がった。

……レイ、ごめんね!!