「…きゃっ!」

「神音、しっかりつかまってろ」

言うなり、穂高はハンドルを大きく切って反対車線に飛び込んだ。

後ろでは追突してきたワゴンが一度止まって、さらに急発進する。

幸い、対向車はなく穂高はまた車線を戻すとそのままトンネルに入った。

「穂高っ!なんなのあの車!?」

「運転席と助手席に1人ずつ。後部座席に3人」

「えっ?」

「あの車の人数だよ。誰だか知らないけど、オレか君、それとも二人ともに、か。殺すつもりだろう」

冷静な瞳の穂高が、口許を噛むようにきつく閉じる。

トンネルは思いのほか、長い。

わたしたちの車とワゴン以外に車の通りはなく、それが余計に恐怖をかきたてた。

穂高がスピードをさらにあげたその瞬間、目の前の視界にこちら側の車線を走ってくる対向車が飛び込んできた。

急ブレーキに体がねじれそうに倒れる。

激突することなく止まったことに安堵したのもつかの間、わたしたちは前方と後方から何者かによって挟まれていた。