穂高が携帯を手に取る。

「……はい」

『……園田じゃ、ないな。……穂高…だね?』

……この声……陣野先生……!!

携帯を通して聴こえる陣野先生の声に、ドキドキと鼓動が速まる。

「あいにくと、園田はここにはいないんだ。奴に会いたくて堪らないんだろう?…陣野先生」

挑発的な穂高の声。

陣野先生は少しの沈黙のあと、微笑を零しているような声音で応えた。

『その口調だと、園田の居所を知っているようだね。実はこちらにも沙耶の携帯あてに園田から連絡があってね。沙耶を必ず別荘に連れてこい、イヴは妹のために必ずここに来るだろうと。穂高、今回ばかりは君と私は目的が一緒のようだ。イヴを護ること…それが全てにおいて優先される。私は沙耶を諦めても構わない。だが、イヴを殺めようとする者を捨てては置けないんでね。私は沙耶とともに向かう。お前にはしっかりとイヴを護ってもらう。…いいな?』

穂高は携帯を持ちながらわたしを振り返り、わたしに語りかけるように、言った。

「……言われなくても、オレの最優先事項だ」

穂高の静かだけど、熱い眼差しが、胸に迫ってキュン…とした。

『…けっこうだ』

陣野先生は冷笑が見えるかのような一言を呟くと、電話を切った。

「神音、今から出発だ。レイも途中で合流する」