「…国枝沙耶に、そういう症状があったと?」

穂高がすかさず言葉を挟んだ。

「自殺を図って精神科に入院した彼女を看護していた時に、見たのよ。彼女の腕にはわたしとよく似た湿疹のあとがあった。あれは確かに『拒絶反応』よ。でも彼女にとって深刻だったのは、彼女を吸血鬼にした男と恋仲にあったってことね。きっと彼への愛と、自分を吸血鬼にした彼への拒絶反応で苦しんだはずだわ」

「…それが、沙耶さんが自殺を図った動機なんでしょうか?」

桜は少し瞳を細めて、首を振った。

「わからない。でも彼女がいろんなことで混乱していたのは間違いないわ。彼女、入院中何度も『芳樹を愛してない』って叫んでた。でも、赤い薔薇を見た時だけ、急に平静に戻ったように呟くの。『わたしが殺した。芳樹、ごめんなさい』って」

………どういうこと!?

穂高と顔を見合わせる。

「…わたし思うんだけど、彼女、精神的な病の他に、何か、暗示のようなものにかかってないかしら?赤い薔薇を見ると急に変わるっていうのが気にかかっていたの。…実は、園田先生は内科の他に、精神分野にも精通している方で…」

穂高は霧が晴れていくような表情で、立ちあがった。

「サンキュ、桜さん。これでやっとわかったかもしれない。神音、行くぞ」

「え!?穂高、なに?わかったの!?」

全然真相がつかめなかったわたしは、ぽかんと穂高を見上げた。

「神音ちゃん、穂高くん。レイに宜しくね。またデートしたいならいつでも大歓迎よって伝えて」

穂高はその言葉に誇らしげな笑みで応えた。

「今回は特別サービスで伝えとく」