「ありがとうございます。桜さん。オレは、浅見穂高で、彼女が入江神音。時間がないので手短に話しますが、オレたちは国枝沙耶さんのなくなりかけている命を助けたい。それには彼女がどうして死に向かっているのか…その根本を知って取り除いてやらなければならないんです。彼女が自殺を図った理由はやはり、彼女の娘が死んだことと関係していると思いますか?」

桜は少し眉根を寄せて考え事をするように天を仰いだ。

「…そうね。それを答える前に一つ聞きたいんだけど、あなたたちは吸血によって吸血鬼にされてしまった類ではないわよね?先天的、生まれつきの吸血鬼でしょう?」

桜から吸血鬼という言葉が出てきてわたしは思わず驚いて穂高を見た。

穂高は眉根一つ寄せず落ち着いた声音で応える。

「ええ。オレたちは生まれつきです。ですが、あなたは違いますね?」

…穂高は桜が吸血鬼だって知っていたんだ。

もともとレイの恋人だったわけだから、それも当然かもしれないけど。

わたしはもう一度桜の顔を見た。

桜は図星を言い当てられたような苦笑を浮かべていた。

「そうよ。わたしはもともと人間だったの。吸血鬼になった当初は大変だったわ」

大変という意味が少しわからなくて、質問した。

「慣れなくて…ですか?」

桜はほほえましいとばかりにわたしに微笑みかけた。

「もっと残酷なものよ。体が吸血鬼の血を拒絶するの。拒絶反応ね。それはごく一部の者にしか現れない症状で、湿疹ができたり、精神的にまいってしまったり。わたしはその頃にレイと知り合って彼のおかげでかなり楽になったの」

……レイがそんなとこでも役に立っていたなんて、ちょっと意外だった。

レイっていつもはあんな調子だけど、ほんとはすごい奴なのかも。