「穂高…」

ベッドのわきで、心配そうにわたしを見つめる穂高の瞳。

「ちょっと嫌な夢見たの。雪音とわたしが通り魔に襲われた時の記憶かも…しれない。わたしの額の傷はその時について……」

ハッとして、穂高の瞳を見つめた。

「…穂高、わたしのことなんでも知ってるって言ってたよね?じゃあ、6年前の事件のこと、何か知らない?」

穂高は少し苦笑して、首を横に振った。

「6年前は、オレ、生まれてなかったし、その時君を監視していた吸血鬼の一族のデータを見たけど、『何か特別なエネルギーの波動があった』としか、残されていないんだ」

……特別なエネルギーの…波動…?

「…でも、君たちを襲ったのは、ヴァンパイアには間違いないよ。君の傷が、その証拠だった」

「……そう」

「神音、さっきレイのつてで、沙耶の精神病の看護をしていたという看護師と連絡がついたんだ。明日会ってくれるってさ。もしかしたら沙耶のこと、もっと詳しくわかるかもしれない。居所はレイが今必死にヴァンパイアたちの情報を集めて探してる。きっと、大丈夫だよ」

穂高が優しくわたしの頭を撫でる。

「ありがと、穂高。でもレイがなんで看護師さんと知り合いなの?」

穂高は呆れたようにため息をついた。

「昔の恋人なんだよ。あいつは日本に来て1年の間に、ありとあらゆる職業の女に手出してるんだ」