「深紅の瞳…それなら神音もだ」

穂高がふっとわたしを見た。

「そういや、そうだね。神音ちゃんは『鬼』なんて印象ないから気づかなかったけど」

レイもわたしを見つめる。

「わたし…進化なんて、まだ吸血鬼に目覚めたばかりだし。それに、深紅の瞳は一千年前に陣野先生が『イヴ』に捧げたものだって言ってた。この瞳が誰のものなのかさえ、よくわからないよ」

わたしたちは、お互いに見つめあって3人ともに、そのまま黙りこんだ。

ふいに、レイの前にあった青の携帯の着信音が鳴った。

「……園田だ」

レイが携帯に耳をあて、片目を細めた。

「は~い?どなたさまで?」

皮肉気に薄く笑うレイの顔には、とても迫力があった。

『…僕をつけていたヴァンパイアだな?』

「あっれ~?なんでオレがヴァンパイアだってわかんの?」

『その銀髪に、氷のような瞳。わかりやすいくらいのヴァンパイアだよ』

「わかりやすいってのはこれまた、素敵な褒め言葉で」

レイがまた銀髪をいじりながら、笑う。

『入江神音に伝えろ。明日の20時。A県のA山麓のふもとに別荘地がある。そこに沙耶を連れてこいとな。いいか、20時だ。それ以上は待たん。雪音は殺すには惜しいかわいい子だ。せいぜい楽しみに待ってるよ』

プツリ…と切れた携帯をわたしは呆然と見つめていた。

「……雪…音……」

「A県?なんでそんなところに。ここからじゃ車で3時間はかかる」

穂高が眉根を寄せると、レイが携帯のフリップをパチンと閉じて言った。

「そこに奴の別荘があるんだ。場所の調べはついてる。問題は、沙耶がどこにいるか、だな。……明日の20時ということは、その3時間前までには沙耶を見つけないと。……明日の17時がタイムリミットだ」

………雪音…………!!