『イヴの欠片』に触れながら、ゆっくりと、もう一度告げる。

「あなたを…どうしようもないほど、愛してる」

ポタポタと涙が『イヴの欠片』の上に落ちていく。

「……神音…」

本気で驚いたような瞳で、穂高がわたしを振り返る。

わたしは、震える体を抱きしめながら、喉の奥で呟いた。

「穂高が好き。だけど、この体はきっと、先生のものだ」

激しく瞳を見開いて、穂高の体が止まる。

「わたしの意志とは裏腹に、体が一千年前の『記憶』を甦らせるの。先生のものだった記憶。それがわたしの記憶なのか、『イヴ』の記憶なのか…わたしにはわからない。ひょっとしたら…イヴは、わたしの体の中に既にいるのかも…しれない」

「……神音…」

「だから今は、だめなの。穂高が好きだから、今のわたしじゃ、嫌。こんな気持ちのまま、あなたに抱かれたくない。ちゃんと自分が誰なのかわかるまで…は」

穂高は、わたしをそっと抱きしめた。

「その結果、君がやっぱり陣野のものだったら?オレ…正気じゃいられない。…死んじまうよ」

「その時は…わたしも一緒に逝く…」

穂高の顔に、自分の首を近づける。

「…神音?」

「穂高、わたしの血を吸って」