沙耶は痺れたように体を痙攣させ、そのまま瞳を閉じて動かなくなった。

……血を吸うことで体の自由を奪う……特殊能力…!!

先生は沙耶をじっと見下ろしていたが、彼女が動かなくなったのを見届けると、彼女を跨いでわたしの前に跪いた。

「……先生。沙耶さんを自由にしてあげて。…そうすれば、彼女は『死』に惹かれることもない。『イヴの欠片』も消えるわ」

先生は、足元に落ちていた沙耶がわたしの足首からはずしてくれた鎖を手に取った。

「……せんせ……?」

「君のような悪魔は、『滅ぼされたほうがいい』そう思わないか?」

意志のない、ガラス玉のような瞳。

わたしは心の底から恐ろしさを感じ、震える体を奮い立たせ走り出した。

その直後、ガクン、と膝が折れ、うつ伏せに倒れる。

………足を……取られた……!

わたしの足首を掴んで倒した先生は、うつ伏せのわたしの背中に乗ってきた。

「……ぐっ…」

ヒヤリと喉に食い込むように巻きつく鎖。

後ろからゆっくりと締める先生の腕は死を弄ぶ死神のようで、絶望が体中に襲ってきた。

……わたし、死ぬのかな……?

そう思った瞬間、わたしは穂高に会いたくて堪らなくなった。

………穂高、あなたに最期に好きって…言いたかった………。