わたしたちは、ライオンに睨まれたうさぎのようなものだった。

ゆっくりと、獲物の動ける範囲を狭めながら、手のひらの上でコマを転がすように、ゲームの執行を楽しむ野獣の心。

沙耶は、わたしの目の前に立ち上がり、わたしを庇うように両手を広げた。

「芳樹、もう…やめて。わたし…あなたのもとを絶対に離れないわ。…麻耶のことも、もう忘れる。あなたのことだけ愛する。…だから、もういいでしょう?」

先生は、沙耶にゆっくりと近づいた。

そして、沙耶の右肩の薔薇の形のアザを冷たい瞳で見つめながら撫でると、泣いている彼女の唇にキスをした。

そのキスは、冷たい血の牢獄のようだった。

囚えることを目的とした、キスの鎖。

「……沙耶さん…」

沙耶は束の間のキスの途中、痺れたように体をビクビクと震わせると、その場に崩れ落ちた。

「沙耶さん!!」

唇から血を流し、まぶたを震わせながら瞳を開けた。

「イヴ…逃げて…。彼に血を吸われると…動けなく…なる…」

「!?」