沙耶は、ゆっくりとした調子で歩きながらわたしの前までやってきた。

彼女は鎖骨も肩もかなり露出している水色のワンピースを着ていた。

金髪がサラリと落ちた瞬間、わたしは自分の目を疑った。

沙耶の右肩の上に、薔薇の形の…………『イヴの欠片』。

……園田先生は恋人とおそろいのタトゥーだと言った。

沙耶が先生の恋人?

そして、沙耶が『イヴの欠片』の持ち主なの………!?

沙耶は縛られているわたしを立ったままぼんやりと見下ろしていた。

「さ、沙耶さん。あなた国枝沙耶さんよね?昨日病院の外で会ったの覚えてますか?お願い、この鎖をほどいてほしいの」

沙耶はなおもぼんやりとわたしを見つめ、そのままふわりと床に座った。

そしてゆっくりと腫れものに触れるように、わたしの頬に触れた。

「沙耶さん…?」

「……イヴ」

…………イヴって……!!

「沙耶さん、わたしがイヴだってわかるの?それは園田先生がそう言っていたの?」

沙耶はうつろな瞳のまま首を横に振る。

「芳樹は…言わない。わたしが、感じている。あなたは、イヴ」

……………国枝沙耶が……『イヴの欠片』の持ち主!!!

沙耶は粉雪のようにハラハラと涙の粒を零すと、その腕でわたしをふわりと包み込み、抱きしめた。

「かわいそうなイヴ……あなたまで、囚われてしまった」