「…だめだ、頭が重くて考えがまとまらない」

わたしは雪音に朝食を作って学校へ送り出すと、そのままベッドに突っ伏した。



夕方、雪音がそろそろ帰ってくるという時間。

ベッドの中でまどろんでいたわたしの耳に、携帯の着信音が聴こえてきた。

バッグの中に入ったままの携帯を取り出し、未登録の番号の電話に出た。

「…はい?」

「突然の電話失礼します。市立病院の内科医の園田ですが、入江神音さんですか?」

………園田先生!?

「…はい、入江です。先生、どうなさったんですか?」

突然の園田先生からの電話に、戸惑いながらも力が入り、携帯をぎゅっと握り締めていた。

「いえ、実は、妹の雪音さんの体のことで取り急ぎお話したいことがあったものですから、お姉さんのご都合が良ければ今日か明日にでも病院へお越しいただきたいのですが」

「…雪音の体が、どうかしたんですか!?」

電話で呼び出すなんて、雪音の体になにかよっぽどのことがあったのかと、不安で声のトーンが一段上がる。

「まだはっきりとはわかりません。ですが、精密検査が必要になる場合もありますので、直接お話しさせていただきたいのですが、いかがでしょう?」

園田先生のアザのことより、雪音の体の心配で頭がいっぱいになり、迷いも何もなかった。

「わかりました。今日これから伺います。5時頃でも大丈夫ですか?」

「ええ、お待ちしております。では」

電話を切って、重たい頭を抱えた。

「……雪音」