激しい雨が打ち付ける様に、先生は、わたしにキスをした。

―――――――これが罪じゃなくて、なんなのだろう?

先生は唇を離し、雨に濡れた顔でわたしを見つめた。

雨と涙でぐちゃぐちゃになったわたしに、眉根を寄せて、囁く。

「……つらいか?」

泣き濡れた笑顔で、天を仰いだ。

「…神様、わたし…狂っちゃったかな?」

先生は、天を見つめるわたしの腰ほどまである髪の毛を片手でひと房掴んだ。

愛おしげに髪の毛にくちづけし、言う。

「愛に狂ったのが、『イヴ』だよ」

「………っ…」

……『イヴ』…?

イヴって……誰?……わたし…が?



「おねえ…ちゃ…ん…?」

激しい雨の音に混じって、聴こえてきたその愛らしい声。

「…雪……音……」

雪音は朦朧とした顔で、こちらを見ていた。

わたしは雪音がここにいた事実以上に、その姿に驚いた。

長い金髪のやせ細った体のパジャマを着た女性に、雪音は抱えられていた。

ゆっくりとわたしたちの横を通り過ぎながら、視点が定まらない表情で夢遊病者のように歩く女性。

雪音だけが、こちらを見てわたしの名を呼んだ。

「お…姉ちゃん…」