突如、襲ってきた貧血と、喉の奥が焼けつくような『渇き』。

「…………っ」



息が、切れる。

声が、出ない。



………………雪……音……………。




冷たい雨が頬を打ちつけている音に、わたしは目を覚ました。

「……ここ…は?」

視界が雨でぼやける。

「!?」

ゆっくりと瞳を開けたわたしの目の前に、陣野先生の顔があった。

「……陣野先生!!」

先生は路地裏の塀に寄りかかり、立ち膝で座っていた。

その先生の両足に挟まれて、胸の中に抱きすくめられている自分に気づき、バっと両手で先生の胸を突き離した。

「……わたし……?」

先生は、いつものクールな表情を崩さずに、じっと見つめる。

そして、わたしの肩にかかっていた先生の黒のレインコートをまたわたしにかけ直し、言った。

「渇きをかなり我慢していたのだろう?風邪をひいているのに、無茶だな」