ま、まずい………!!

わたしは駆け足でもと来た道を戻る。

先生は、国枝という女性のお見舞いに来ただけなんだろうか?

それにしたって、病室に入りもしなかったし。

走りながら1階の待合室に戻った。

な、なんとか先生には気づかれなかったみたい。

「雪音?」

雪音がいるはずの待合室を見渡す。

たくさんの患者さんの中のどこを探しても、雪音は見つからない。

「ゆ…雪音…!」

不安になって、小さな子供の顔を一人一人見ていく。

どうしよう。

一人で待合室に行かせたから、どこかで迷ってしまったのかも。

ふと、病院の玄関の外に、ふわりとした髪の小さな雪音くらいの背の女の子が目に入った。

雪音……!?

慌てて外へ出ていく。

病院の外に出た瞬間。

雪音の姿がどこにもないことに気づいた。

「……ゆ…雪音!!」

雪音の名を叫びながら、わたしは泣きそうになって雪音を捜し歩く。

病院から出て少しして、雨が降り出してきた。

傘も持っていないわたしは、ぶるっと身震いしながら、一度引き返そうとクルリと向きを変えた。