どうして陣野先生が、ここに!?

今日は学校のはずだし、陣野先生がこんなところにいるなんて。

まさか、先生がここにいるってことは……?

園田先生が『イヴの欠片』を持つ者――――――――!?

わたしは、雪音に待合室で待っているようにと言って、先生のあとを追った。

細心の注意を払ってつけなければ、先生には気づかれる。

そっと、距離をできるだけ離して先生のあとを追う。

先生は早足で、学校の時とは違い、髪を束ねずに眼鏡もかけていなかった。

手には、大きな赤の薔薇の花束を抱えている。

先生、一体どこへ行くの?

先生は後ろを振り返ることもなく、どんどん奥へと突き進んでいく。

いつ気づかれるかと思うと、ドキドキした。

気がつくと、わたしは『精神科病棟』に入り込んでいた。

………精神科………?

先生は精神科の一つの病室の前で立ち止った。

わたしはそれを廊下の曲がり角の陰からそっと見つめた。

吸血鬼の瞳に神経を集中させる。

まっすぐに先生の見つめる病室のネームプレートに神経を集中させた。

『国枝沙耶』

プレートはそれ一つだけだった。

一体誰?

先生とどういう関係なんだろう?

先生は薔薇の花束を病室のドアの手前に置くと、クルリとこちらを振り返った。

慌てて廊下の角に隠れる。