訊こうか、訊くまいか、とても迷った。

まさかこんなところで『イヴの欠片』を持つかもしれない人に会うなんて。

じっと瞳を見開いて先生の首を見ていると、彼は瞬きをしながら振り返った。

「…僕の首が気になるんですか?…ああ、そうか。入江さんも胸にタトゥーがありましたね」

ニッコリと微笑む先生。

「せ…先生もタトゥー入れてるんですね。…びっくりしました」

「いや、お恥ずかしい。これは恋人が入れてとせがむから、嫌々やったんですよ」

照れたように頭を掻きながら微笑む。

……ほんとうだろうか?

これが本物の『イヴの欠片』なら、先生はわたしを『イヴ』だって気づいているはず。

けん制するために、嘘をついていることも考えられるけど……。

なんて言ったって、『イヴの欠片』をもつ者は、『死』へと、『陣野先生』へと引きつけられる運命なのだから。

それを阻止しようとしているわたしに、正体を易々と明かすはずが、ない。

そう思うと、この優しい笑顔の裏が妙に気になってきて、どうしようもなかった。

診察室を出て、雪音にもう一度訪ねる。

「ねぇ、雪音。園田先生、『優しかった』、よね?」

雪音は、来る前に訊いた時とは、ちょっと違う複雑な顔をした。