「妹さんの風邪はだいぶよくなってるようですね。念のため薬を3日分出しておきますよ」

「ありがとうございます」

30歳ほどだろうか?

少し茶色がかった髪の、なかなか顔のいい優しそうなお医者さん。

雪音が優しかったと言ったのも頷ける。

「それじゃ、お姉さんも診察しましょうか」

喉の奥を見られ、シャツの前を開けるように指示される。

ちょっと、緊張した。

胸の真ん中に、薔薇の模様の『イヴの欠片』を見たら、どう思われるだろう?

アザにしてはちょっと変わった形だし、きっとタトゥーに思われるだろうな。

聴診器が当てられるところが少しヒヤリと冷たい。

「園田」と言うネームプレートをつけたお医者様は、アザを見ても顔色一つ変えず診察した。

「お姉さんも風邪でしょう。熱が上がらないように安静にしてください。お薬出しておきますよ」

園田先生は、優しい笑顔で目じりにしわを寄せて微笑む。

医者がクルリと向きを変えてデスクに向かったその時。

白衣の襟から少しはみ出しているアザのようなものが見えた。

「!?」

上の部分の少ししか見えないけれど、それは、薔薇の形のようにも見えた。