「お姉ちゃん……だい、じょぶ…?」

少し顔の赤いわたしを雪音が心配して見上げながら歩く。

「大丈夫!風邪なんて引いてられないからね。今日は病院でちゃんと治してもらおうね、雪音」

雪音の風邪はもうだいぶよくなっていた。

その代わりわたしが引いてしまったわけだけど、今日はついでなので一緒に診てもらうことにした。

「雪音が行った病院の先生、優しかった?」

雪音はふんわりと微笑む。

「うん、優し、かった」

雪音は最近よく笑う。

全然笑わなかったこの6年間が嘘のようだ。

よかった。

雪音、わたしはその笑顔だけで、幸せになれるんだよ。



バスに乗って家から15分のところの総合病院前のバス亭で降りる。

10階建てのその病院はこの街で一番大きな病院だ。

病院なんて1年前の雪音の付き添い以来で、消毒薬の匂いを懐かしく感じた。

学校を休んで雪音と二人でバスに乗ってくるのも、なんだか楽しくて、いいもんだなって風邪引きのくせにちょっと楽しんでいる自分がいた。

「入江神音さん、雪音さん。診察室へどうぞ」

看護師さんが内科の診察室に、わたしと雪音を促した。