まどろみの中で、妙に冷たくて、でも心が触れ合うような不思議な温度を感じていた。

ヒヤリ、とわたしの唇に触れるソレ。

その冷たさは、わたしの体をゾクゾクさせ、同時に、『彼』の地獄の底のように深い愛を感じていた。

『お前が……イヴか……』

長い黒髪が、わたしの胸に触れる。

『彼』の、鬼のように冷たい、深紅の瞳が、肌の露わになったわたしの体を見つめる。

『………カヅ…キ……』



「!!!!」


バサっと布団をはがすように起き上がった瞬間、夢と現実の狭間がわからなくなって、頭痛を感じた。

「……夢……?」

でも、やけにリアルな夢だった。

唇に触れた冷たい感触が、まださっきまで感じていたみたいに残ってる。

ズキンと頭痛が激しくなってくるのを感じた。

昨夜、港まで行って泉水の救出に成功したけど、どうやら、わたしは冷たい海風で、風邪を悪化させてしまったらしい。

「…クシュン!」

くしゃみが出た途端、身震いが走る。

「…風邪引きの吸血鬼なんて、かっこ悪い」

穂高が聞いたら、笑うかも。

可笑しくなって、クスっと笑う。

起き上って雪音を呼びに廊下に出る。

「よし、今日は雪音と一緒に病院に決定!」