流血する右肩を押さえながら、泉水がムクリ、と起き上った。

「……つぅ…」

それを見て、怯えたように瞳を見開く英一の驚愕の顔。

「……もういい。わたしを殺して。あなたが変わらないなら、わたしが変わってあげる。死にそうになって、気づいた。復讐なんて、関係ない。わたしの心は、既に英二を失った時から、空っぽだった……わたしは、ただ、英二のところに行きたかったんだ」

涙をボロボロと零す泉水の瞳は、渇いた土に、一気に溢れだした水流のようで。

彼女の渇いた瞳がずっと、渇いた土が雨を求めるように、彼女の『涙』を求めていたんだって。

そう思ったら、わたしはふらっと前に進み出ていた。

「神音…!」

無意識に穂高の手を払いのける。

ふわりと、座っている泉水の体を前から抱きしめる。

わたしの背中には、至近距離から英一の銃口が向けられていたけど。

不思議と、銃なんて何も怖くなかった。

「入江…神音…」

「ねぇ、『死』は望むものじゃない。自然にあなたの体に備わっているものよ。英二さんのために死ぬなんて、きっと英二さんもあなたと同じ涙を流すんじゃないかな?彼を同じように、苦しめたい?」

ふるふると首を振る泉水をぎゅっと抱きしめる。

銃口を向けられて『死』と隣り合わせのふわふわとした浮遊感。

泉水を抱きしめながら英一を振り返り、冷たく言い放つ。

「泣いている女の子を殺せるなら、あなたこそ『鬼』だわ」