内側に突然開いたドアに吸いこまれるように、わたしはバランスを崩した。

ドンっとぶつかった固い胸の感触。

「……先生!!」

わたしは先生の胸にすっぽりとはまり、背の高い先生の顔を見上げた。

いつもとかわらずクールで、隙を見せない表情の先生に、わたしはゴクリと唾を飲み込んだ。

「…入江…神音…」

先生の後ろから、泉水の少し驚いたような声が聞こえた。

泉水は、音楽室の床に仰向けになり、スカートは太ももまでめくれ、『イヴの欠片』を露出させていた。

「…古河さん!!なんてことするの!?わたしは……あなたに死んで欲しくないの!!」

泉水は冷たく片眉を上げると、ゆっくりと立ち上がった。

「死んで欲しくないって、わたしのこと全然知らないくせに。わたしに死んで欲しいと思ってる奴はいっぱいいるわ。吸血鬼の一族に追われるのは、もううんざりだから、死んでやるのよ。でも、奴らには殺されたくない。素敵な陣野先生にキスされて、『イヴ』の体に取り込まれ、イヴとして生きるなら、悪くないわ」

「そんなこと……!」

わたしが泉水に駆け寄ろうとしたその時、先生はわたしを制止して言った。

「泉水……それは、『本心』か…?」