穂高は後ろを振り返り、わたしにだけ聞こえる小声で囁いた。

「悪い。先帰ってて」

仕方ないか。

今日は泉水にも会えないことだし、先生も特に動く気配もない。

わたしはふっとため息をつき、なんとはなしに窓の外を見た。

「……え…?」

2階の窓から下に見える光景にわたしは目を疑った。

………泉水だ……!!

制服を着た泉水が、学校の正門から入ってくる。

……どうして?

休んでいたのに、どうして今頃学校に……?

泉水は少し早歩きな様子で、校舎の入り口に吸いこまれるように入っていく。

ゴトン…とモップを投げ捨て、慌てて教室を出た。

まさか………!!

泉水……あなたまさか、先生に会おうとしているんじゃ……!!

お願い、やめて。




わたしは…………あなたを取り込みたいんじゃない!!!