抹殺の対象って………!!

カチャーンと音をたてて、わたしのグラスがカウンターの上に転がり、ガラスの破片が散らばった。

「あ…ごめんなさい!!」

「いいよ、グラスくらい」

レイが優しく笑ってガラスを拾おうとしたのを見て、

慌ててガラスに手を伸ばしたわたしの右手の人差し指に鋭い痛みが走った。

「……っ」

「神音ちゃん、だいじょー…」

指から流れる血を抑えようとしたわたしの両手をものすごい速さで掴む穂高。

彼はわたしのガラスで切れた指を優しくくわえた。

「!?」

………ほ、穂高!?

ぽかんと眺めるレイの目の前で、穂高の温かい舌の感触と、だんだんと熱を帯びて熱くなってくる指先に、わたしはキスされてるみたいに顔中が真っ赤になっていた。

「ほ、穂高…もうい…」

もういいと言おうとしたわたしにレイが「やってもらえ」と言わんばかりに、チッチッと人差し指を左右に振る。

だんだんと穂高の舌の上で、熱とともに痛みが消えていく指先。

穂高は指から口を離し、言った。

「治療完了。気をつけろよ。ヴァンパイアは血に飢えてるんだから。特に、こいつの前では」

「しっつれーな!オレは血にも飢えてないし、女の子にも不自由してないの!でも、ま、キス魔だから神音ちゃんが望むならいつでもキスしてあげるけどね」

そう言ってまたウィンクする。

「神音、出るぞ」

「え?」

穂高はムっとした様子でわたしの手を引っ張りながら、入口へと歩き出す。

「吸血鬼の一族の動き、ちゃんと調べとけよ」

穂高の一言に、「はいはーい」と手を振るレイ。