横を見るといつの間にかグラスを手にしていた穂高も、咳き込んでいた。

「レ、レイ!お前な…!」

「穂高はね、君を初めて見てからずっと『血のカクテル』しか飲んでないんだ。そのカクテルみたいにね。愛する者がいるヴァンパイアにとって、吸血行為は『愛の行為』になる。特に初めての吸血は、最も衝動的に愛する者の血を求めるものなんだ」

穂高がレイを睨みながら、心なしか顔を赤くしているように見え、わたしも照れて下を向いた。

穂高……わたしに会う前からずっと、そんなにわたしを想っていてくれたの…?

わたしはまだ少し残っている赤いカクテルをじっと見つめる。

このカクテルには、血が混ざっていたんだ……。

血がおいしいと感じた自分がまぎれもない吸血鬼であることを実感した。

『初めての吸血は、最も衝動的に愛する者の血を求める』

その言葉が妙にひっかかった。

古河泉水が言った言葉。

『あなたの一番好きな人はヴァンパイア?人間を好きになっちゃ、だめよ』

あれは……こういうこと。

泉水は初めて吸血に目覚めた時、愛する人がいた。

彼は人間で、彼女は衝動的に彼を吸血してしまい、そして、

…………殺してしまったのかもしれない。

そう思うと、泉水のあの渇いた瞳の意味が、少し理解できたような気がした。