最後のラブレター

その瞬間ずっっと
“怖い”
と感じていた2人の指導員が
ニコッと笑ってくれた

「アホやん!
行ってらっしゃい!」

手を振った2人の指導員は
優しい顔をしていた。

本当は優しいなんだ

第一印象で決めちゃ
ダメだな…

トイレまで結構距離があって
その間も笹原先生と
2人で歩いて行った

何か…
わざわざトイレにまで
付いて来てもらって
申し訳ないな

そんな事を思いながら
世間話しをしていた

「携帯忘れる人は
結構いるけど営業時間終了してまで取りに来る人はあんまいてないで!」

「ごめんなさ~い…」

「家は近いんや?」

「はい、すぐですよ!
全然歩いて来れる距離です!」

「羨ましー、
俺なんて車で40分位だよ~」

この教習所は長い廊下に
4台置いてある
自動販売機の前を通ると
すぐにトイレがあるんだ

2台目の自動販売機の側から
一気に薄暗くなって
陽が沈むと…
ちょっと不気味なんだ


トイレに着き
携帯を持って出ると
外には笹原先生がいなかった

…戻っちゃったのかな?


―――ガチャ

向かいの男子トイレから
笹原先生が出てきた

「ごめんね!
俺トイレしたかったから!」

その瞬間
笹原先生の優しさが
一気に伝わってきた