数人の影が、一つの影を囲むようにして立って居る。其処で行われているのは暴力。蹴ったり、殴ったりと、暴力が止む事は無い。彼等が飽きる迄其れは行われる。

「何とか謂えよ!」

「オラァ!」

ドガッ、という音に混じり、バキッと何かが折れる音がした。其の音がした瞬間、彼等の顔は蒼白に変わった。

ブラーンと、力なく垂れ下がる少女の腕。其の激痛で顔を歪ませる。

「やべぇ!!逃げろっ!」

其の場にいた者たちは、其の光景から目を背けるようにして、走り去っていった。残された少女は、只、痛みに耐えながらじっとして居た。

けして、泣く事は無い。

激痛で、泣きそうになっても下唇を血が出る程にまで噛み締め、只、じーっと、其のことが終わるのを待っていた。


「・・・お兄様・・・」

少女の唯一の心の救いは、兄だけだ。
親に見離されたが、兄だけは少女を思い、今までずっと世話をしてきた。

「御免なさい・・・」

ザクッ、と鮮血が飛び散った。

ざぁあ、といつの間にか雨が降っており、地に滴った血色を洗い流すように、止め処無く、降り注ぐ。

(憎いです。お兄様)

(私は何も出来ない自分が、)