遠ざかる足音に、 「いいの?」 って重なる凱の声。 「凱・・・どうして、なんで?」 ようやく出た言葉は疑問ばかり。 そんな私に、何も言わずにもう一度ぽんぽんと頭を叩いてから、 凱はドアに向かって歩いていく。 「凱!」 かける私の叫び声が、体育館にも響いていく。 ゆっくり振り返る彼に、私は小さく尋ねた。 「どこにもいかないよね?」 彼はゆっくりと笑うんだ。 「あぁ。どこにもいかないから・・・」 少し複雑そうに笑って見せたそんな彼の表情は、 その時の私には、意味がわからなかったんだ。