今から会場に入る人たちの波に逆らって、修ちゃんが私の肩を抱くようにして前を歩いてくれる。
もつれそうになる足をなんとか動かしてようやく道路に着いた。
手を挙げ、タクシーを待つその時、
「栗原さん、だよね」
「あの子が・・・」
周りからぼそぼそと小さい声が聞こえてたのはわかった。
修ちゃんは何も答えなかったけど、
ポンポン
「ひゃっ」
肩を叩かれ、小さく悲鳴を出した私を修ちゃんがぐっと引き寄せてくれた。
「なんですか?」
怒りを押し殺したような修ちゃんの声に、私の肩を叩いた女の子は戸惑ったようだった。
「噂の彼女さん、かな・・・・、って」
「違います。てか・・・・ちょっと今それどころじゃないから・・・」
そう言って、ちょうど停まったタクシーに私を先に乗らせてから、自分が後に続いた。
ドアが閉まって走り出すと、修ちゃんは
「ごめん」
といってから、私の掌を大きな手で包んだ。
「!?」
「・・・・震えてる」

