わかるけど……言葉にだせば辛くなるから、 ……切なくなるから…、 ガタンッ! 立ち上がったはずみで椅子が跳ね上がる音が耳に響いた瞬間、左腕に衝撃を感じる。 見ると、凱が私の腕を掴んでるのがわかった。 「……っ!」 痛いよ、って口にしかけた時、凱の低い声が一旦静かになったホールに響く。 「どこ、行くんだよ…」 腕よりも、その私を見つめる視線に、胸が……痛い。 「痛いよ…離して」 やっと声に出した言葉はあっさりとからまわって、凱のつぶやきに消えた。 「行くな……もうどこにも」