「凛・・・?」 開いた扉の向こうから、ボムッとひとつドリブルの音が聞こえて、 ダンッ! 力強い音の後に、 ガンッ!! とゴールが揺れる音が響いた。 私は、朝日の逆光の中で、揺れるその影を、 ゴールにつかまるように高くジャンプしたその姿を、 反射的に言葉にならない声を出して、 見つめるしか出来なかった。 「凱・・・」 鮮やかに思い出す、あの時の少年の姿。 あの、いきなり訪れたあの夏の日。 人間は本当に驚いた時に、動くことも声を出すことすらも出来ないんだと、 その時実感してたんだ。