「汐、ごめん。待っただろ?」 ふいに声をかけられ、びくっとなった私を濡れたハンカチを手に修ちゃんが不思議そうに見つめる。 「ううん・・・」 言いながらも、もう一度さっきの風船の方向を見たけど、 そこには、銀色の風船を手に、ニコニコ笑ってお母さんの手を引かれてる女の子の姿しか見えなかった。 「汐?!」 「あ、ううん。ごめん・・・修ちゃんありがと」 私の足にハンカチを当ててくれる修ちゃんの手を見ながら、私の頭の中からはしばらくさっきの風景が消えることはなかった。